健康診断・人間ドッグの結果活用ポイント(簡易ver)

 普段お仕事で企業や自治体の簡易健診のお手伝いをさせて頂く事があり、実際の現場では受診者が健診結果をみてご自身の身体の健康状態を知ることになります。その中でご質問いただく事があるので、いくつかに絞って解説していきたいと思います。

 お勤めされている方は、年一回は定期健診を会社負担で受けることになっています。受診時期は事業所によって異なり、労働安全衛生法というので義務付けられていて、従業員の健康リスクを減少させて働いてもらおうという事です。

検査結果を受け取ってから、その先の再検査項目や異常数値についての改善・予防は個人に任せる形になっているのが現状です。再検査はその箇所によっては数回通院する時間と数万円の検査費用を自己負担することになります。

この記事でわかること

健診結果項目ごとの解説と異常数値についての改善または予防策を知る事で、ご自身のお身体の状態について理解を深めることができます。

結論から話すと、「食事・運動・休養の見直しと早期発見」が健診項目において共通しています。

BMI(基準値:19~25㎏/㎡)

身長に対して体重比が適正値なのか、病気に繋がるリスク」をみる事ができます。

「BMI25以上で肥満」に分類されます。体脂肪過多の状態であり、糖尿病などの生活習慣病や妊婦であれば帝王切開分娩などの観点から、減量する事を推奨されます。

一方「19未満では痩せ」に分類されます。一般的には栄養不足や鉄欠乏症貧血、婦人科系では生理不順や早産・低体重児など、高齢者では骨粗しょう症からのロコモティブシンドロームのリスクがあります。

腹囲・内臓脂肪(基準値:腹囲 男85㎝ 女90㎝ 内臓脂肪面積100㎠)

内臓脂肪過多にプラス生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常いずれか)の内2つが加わると、心疾患や脳疾患リスク」が高くなります。これが、いわゆる”メタボ”です。

内臓脂肪と皮下脂肪の2種類があり、一般的に内臓脂肪過多が健康リスクが高いとされています。お腹周りを中心とした内臓に付くため代謝異常などをおこしやすいです。要は加齢とともに脂肪が付きやすい(又は落ちにくい)状態になることで、有酸素運動による減量を推奨されます。

血圧(基準値:収縮時140㎜/Hg 拡張時90㎜/Hg)

「慢性的に基準値を超えると高血圧予備軍」となり、生活習慣の改善を行っても数値が改善されない場合は薬で治療します。

血圧値のみの異常であれば、その時点で問題ありません。ただし、内臓脂肪過多や脂質代謝異常など複合的な異常値や既往歴がある場合は「動脈硬化→心疾患や脳血管疾患のリスク」があるので気にした方が良いでしょう。

重要な事は「早期発見と血圧のコントロール」です。

 高血圧ばかりが注目されがちですが、高齢になってくると低血圧にも注意が必要です。すでに降圧薬を服用されている方で、クスリが変わった又は飲み始めの場合は、血圧値と心拍数の自己管理をしましょう。

視力・眼圧・眼底

ここでは眼圧検査について解説します。(定期健診では実施しないのがほとんど)

デジタル化の現代社会で40代以降になったらおススメしたい健診です。理由は視覚障害の早期発見が最大のメリットになります。

緑内障が最も多いと言われており、視野が狭くなったり、部分的に見えにくい状態になり初期の自覚症状がわかりずらいです。

そのほか、白内障や網膜剥離や黄斑変性など加齢に伴って症状が悪化するものもあります。

聴力

最近ではイヤホンを長時間つける方が多く、難聴や外耳炎になりやすい環境です。

基本的には加齢による原因が大半ですが、仕事で聴覚への慢性的な刺激や生活習慣なども考えられます。また、30代から突発性難聴と診断される方も珍しくありません。基本的に薬治療になるので、要検査の方は早期治療がおススメです。

聴力・視力が健康な状態から低下すると、人とコミュニケーションする上でストレスになるのが想像できます。日常生活でも耳鳴りや電子機器の音量を知らないうちに高くしていたり…初期症状が出たかもしれないと思ったら、早めの診療をしましょう。

血液

血液成分や血中の糖や脂質、感染症やホルモン分泌からなる免疫系の健康状態を知る事ができます。

脂質代謝(基準値:総コレステロール値150~220 LDL≧120 HDL≦40 中性脂肪≧150)

 健診機関によって微妙に基準値が異なります。血中脂質量を調べることで、動脈硬化のリスクを判断します。進行すると心疾患や脳血管疾患のリスクが高まるので注意が必要です。コレステロールは生命維持に不可欠であり、それぞれの値のバランスが重要です。基本的に運動や食事内容の見直しと改善で数値は変化します。

中性脂肪(30~150㎎/dl)

摂取した糖質が過剰エネルギー(中性脂肪)となって脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。

数値が高い:動脈硬化、脂肪肝、脂質異常  数値が低い:肝硬変

HDLコレステロール(≦40㎎/dl)

LDL悪玉コレステロールの回収役で、少ないと動脈硬化のリスクに。多すぎても異常値と判断されます。

LDLコレステロール(60~140㎎/dl)

ホルモン産生や細胞膜の材料として重要な役割の一方、過剰になると血管壁に付着し動脈硬化のリスクに。

血糖値(空腹時血糖:100~126㎎/dl HgA1c:≧6.5)

血液中のブドウ糖がエネルギー源として利用されているかを調べ、主に二つの検査項目から判断し血糖値が高いと糖尿病や膵臓癌やホルモン異常が疑われます。

糖尿病

本来、膵臓から出るインスリンの作用が悪化する事で、血糖値が慢性的に高くなりさまざまな合併症を引き起こすと言われています。自覚症状が無いので放置されがちですが、健診で指摘されたら早めに受診することをおススメします。

インスリン抵抗性が進むと腎不全、下足切断、心疾患、失明といった生活習慣病の中で最も恐ろしい病気です。

腎機能(クレアチニン:男≦1㎎/dl 女≦0.7㎎/dl eGFR6:≧60)

血液中の老廃物や水分を排泄できているかを調べ、血液と尿検査の数値から判断しています。

アミノ酸代謝時の老廃物が尿中に排出されているかを見ています。正常な腎臓機能はろ過と水分調整を適切に行います。主に加齢による原因が考えられますが、偏った食生活や運動不足も少なからず影響します。(プロテインが健康に悪いとされる理由です)

肝機能(AST・ALT:≦30U/L γ-GTP:≦50U/L)

悪化しても自覚症状が現れにくい臓器なので、定期健診で指摘を受けたら診療をおススメします。

肝機能の働きとしてエネルギーの代謝と貯蔵・解毒・たん汁の生成があります。

  • 胃や腸で分解された栄養素を貯蔵し、必要に応じてエネルギー源を作る
  • アルコールやアンモニアなど有害物質の無毒化
  • たん汁生成によって脂肪の乳化とたんぱく質の分解、コレステロールの排出

過剰な栄養・アルコール摂取によって脂肪肝になり、肝臓の機能低下によって肝硬変や肝炎など重症化のリスクになります。

歯科検診(80歳で20本の歯を目指す)

一般の定期健康診断の範囲外ですが、とても重要な部分です。

ご自身の歯が何本あって、口腔内の状態がどうなっているかご存じでしょうか。また口腔ケアができていないとどうなるか…。

歯が無くなる→食べれないor誤嚥→栄養不足と偏り→フレイル(虚弱)の相関リスクが考えられます。また、歯が無いので周りの人とのコミュニケーションも取りづらい状況から、人との関わりも浅くなってくるのが予想できます。

入れ歯という選択肢もありますが、これまで通りの食生活ができるのかも疑問ですね。

こうなる前に虫歯と歯周病には気を付けるべきで、自分に合った歯磨きケアと歯科医院での定期健診が必要になります。個人差があって、口腔内の酸性度合いや歯茎の状態により、虫歯になりやすいや歯周病リスクが高いなどあるので、知っておくとセルフケアをするポイントが判りやすいですね。

ロコモティブシンドローム検査(骨粗しょう症)

こちらも一般の健診では行いませんが、とても重要です。

筋肉・骨・関節など運動器の一部が衰え、生活する上で移動機能の低下した状態です。

「健康寿命」を考える上で、自立した生活をするために普段から運動する習慣が必要となってきます。

一部の目安としては、

  • 信号が切り替わる前に横断歩道を渡り切れない
  • 40㎝程度の椅子から支え無しで脚だけで立ち上がる事ができない
  • 片足立ちで靴下を履けない
  • 段差でつまづきやすい、手すりが必要

脚(太もも)と体幹部の筋力が衰えやすいと言われていて、日常生活動作では意識的に動かす事の無い部分です。筋肉質になるというより、習慣として筋力をいろんな角度や強度で使うようにすることが重要です。

運動が苦手な人は、なるべく自分の身体を長い時間使って動く趣味(登山やゴルフ系スポーツなど)もおススメです。

まとめ

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

検査結果が手元に渡った段階で、ある程度の知識として参考にして頂ければ幸いです。

ご自身の健康に当てはめた時に、各項目のメリット・デメリットを理解した上で

  • 自分の感情に寄り添って(再検査項目をこのまま放っておいたらどうなるか…など)
  • 環境の再評価(病気になるとご自身だけでなく周りにも少なからず影響を与える…)

次のステップの行動変容に移るかどうかを考えて頂けたら嬉しいです。

あくまでも健康は「身心の土台」であって、その先のどういう状態で豊かな人生を大切な人と過ごしたいかに尽きると思います。

皆様のご健康とご多幸を心より願っております。

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